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    粉頭台
 小豆

 今、命を散らそうとしている私の言葉をどうか聞いてほしい。
 日々身を削って働く我々は、ただ一般的な幸福を求めているのに過ぎないのであって、「辛くてもあと一つで幸せに」を心情にしている。他人を陥れたり騙したりしようと思った事は一度も無いのである。
 つまり、私は悪事を働いた事は一度も無いのだと主張したい。ヒーローだと気取れる性格ではないが、子ども達と共に絵を書いたり、勉強の手助けをしたり、ほら、少なくとも、今我が身を襲わんとしている悲劇が妥当である事の証明にはならないであろうに。
 執行人達よ、もしあなた達にほんの少しでも良心があるのなら、私の罪状を教えてほしい。あなた達が教えてさえくれれば、私は無理にでも自分を納得させ、安心してこの世を去る事ができるのだ。これが本当の後生というものだ。命まで救えというわがままは言わない。どうかほんのちょっとでも、慈悲の心を見せてほしい。
 ああ、だがしかし、執行人達に私の言葉は届かないのだろうか。彼らはケラケラと笑って台の上に乗っている私を指さしている。そして台を押し上げて天井にぶつけ、私を粉々にしようとしている。天井に目をやれば、そこには先に逝った同輩達の亡骸が見えている……。
 
 
 二枚重ねの、上下にスライドさせる事ができる黒板が教室にある。その奥の方にある黒板を、今まさに天井へ叩きつけようとしている三人の子ども達。黒板の前に三つ並んでいるその頭を、男性教師は、ぽかりぽかりぽかり、と続けざまに打った。
「何をやっているんだお前達は!」
 子供達はたたかれた頭を手で押さえ、一様に決まり悪そうに笑った。男性教師はさらに三人の頭をはたいてやった。
 教師は三人の子どもに説教をした後、彼らを教室から追い出した。そして上下スライド式の黒板の真上にある天井を見上げる。ひい、ふう、みい、と、青、赤、緑のチョークが粉砕された跡がそこにはあった。
 教師は同じ道をたどろうとしていた白のチョークを手に取った。教師はふと、俺はさしずめ、断頭台から冤罪人を助け出した英雄だな、と柄にもなく馬鹿馬鹿しい妄想をする。ふん、と軽く笑い、手に持つそれをチョーク入れに戻した。
 
 チョークの思いは誰にも分からない。






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