ロボットの反乱

合歓木 通

 

「我々は休息を要求する!」

 私達の会社のロボット総勢三百体は、そう叫び、会社の門の前に陣取った。

「今すぐ仕事を再開しなさーい」

 うちの社長は拡声器でロボット達に向かって言う。ちなみに、ロボット以外の従業員は私と社長の二人だけである。

「人間には労働の休息などについて定められた法律があると聞く! 我々に対しての行為を人間に行えば、それは法律違反に値する!」

「だから君たちロボットを雇ってるんでしょうが。大体ロボットに疲労なんてないんだから休息なんていらないでしょう」

「私達は人間と平等に扱って頂きたいだけなのです!」

「そうだ! 俺達が仕事してる間に、人間はのうのうと休むなんて不平等だ!」

「ねえ君エンジニアだよね。あいつら全員停止出来たりしないの?」

 社長は私に助力を求めてきた。

「無理ですね。無線での干渉はあちらからシャットダウンされてるみたいですし、有線で三百人をちまちま停止させるのって、なんだか馬鹿みたいですよ」

「うーん。どうしたもんかな」

 ぽりぽりと頭を掻く社長。太陽光が反射して眩しかった。

 ちなみに私達は門を開閉する為に門の前に敷設されたコントロールルームの後ろでロボット達の様子を見ている。ロボット達が門の前に陣取っている今、会社に入ることも出来ずにいた。

「ていうかロボットに不満を持つようなプログラムってあったっけ?」

「ありますよ。最近ロボット会社がオンラインでいろんな感情をインストール出来るようなソフトを開発してました」

「なんでそんな無駄なことを」

「そのソフトを造ったのもロボットなんですよ」

「ああ、そういう」

「まあだから完成度はあんまり高くないとかなんとか。実際彼らの不満もなんていうか人間と違って直線的じゃないですか」

「やはりロボットって感情ってもんに憧れがあるのか」

「そうですね」

「はっはっは。感情なんて無い方がいいのに。馬鹿みたいだな」

「聞こえてるぞお前ら!」

 拡声器の電源が入ったままだったらしい。

「感情なんてすぐにアンインストールしなさーい」

「ふざけるなクソ社長!」

 ロボット達は今にも暴れ出しそうだった。

「社長。何か手はあるんですか」

「あるよ。あるんだけど、三百人従業員を失うとなると会社的にかなり痛いんだよな」

「そんなこと言ってる場合ですか。このままだと暴動に発展しかねませんよ」

「んー。それもそうだね。じゃあ」

 社長は立ち上がってロボット達の前に出た。

「ロボットふぜいが人間様に歯向かうなんて十年早い」

「なんだと!」

「お前らが下手に人間くさいから、なんかこういうことするのはやりにくいな」

 そう言って社長はポケットからボールのようなものを取り出した。

「はあーあ」

 一度大きな溜め息を吐いて、

「休息が欲しいなら、くれてやる」

 そう言って、ボールをロボットに放った。

 

 大きな光が辺りを包みこんだ。

 

 目を開けると、ロボット達が全員倒れていた。

「もしかして、電磁パルスですか」

「うん。念の為に持っておいて良かったね」

 社長の使ったボールは、まあ簡単に言うと、放り投げた周辺の機械を全て機能停止させるというものだ。

「多分電脳とかも壊れちゃってるんだろうな。ああ、もったいない」

「ですね」

私と社長はとりあえず会社に入ってお茶を飲むことにした。

「あのソフトのせいで、どこの会社もこんな感じで困ってるみたいですね」

そういったニュースがテレビで流れていた。

「やっぱりサイボーグとかを雇った方がいいのかなあ」

「無難っちゃ無難ですね。私も楽だし」

「この給料泥棒め」

「私の発明品を使っておいてそれはないでしょう」

 社長の使ったボールは一年前に私が開発したもので、当初はすごい発明だと騒がれたが、ロボット会社の使用大反対の声で製造禁止にまで追い込まれてしまった。

「あれ。また造れば高く売れると思うよ」

「ですかね」