錬金術師の助手  有内 毎晩



 僕は研究室への帰り道、鉄屑ジイさんの言葉を頭の中で反芻していた。

 僕には、博士が辛いことや悲しいことで立ち直れなくなるところが想像できない。彼女も人間だ。そういった感情を抱いているところを見たことはある。それでも彼女は、それらを撥ね退けて自身の信じる道を前進するような人間だと思っている。

 ただ、もしも彼の言うように彼女がどうしようもない状況に置かれたら、僕は本当に彼女の傍にいる資格があるのか。拾われた身でありながら、彼女を同等の立場から助けることが許されるのか。

 ……考え始めると不安になってくる。

「ん?」

 思考を中断する。

 研究室の方角からぞろぞろと何か集団が出てきている。その先頭に立つ男に見覚えがある。確か、先日博士にアゾット剣を求めてきた軍人の男だ。懲りずに今日も来ていたようだ。

 集団とすれ違い、僕は研究室の前に立つ。

「ただいま戻りましたよ、博士」

 ノックをしてから、扉越しに声をかける。

「……?」

 しかし、返事が無い。

「博士……?」

 先程のすれ違った軍人の集団を思い出す。何か嫌な予感がした。

 僕は勢いよく扉を開けて中に入った。

 

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