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おかしな城の少女たち  バックベアード



2、グリフとチシャ

 

翌朝――。

『女王様に会いに行く』。言い出しっぺのはずのメアリが来ないので、シャーロットはそもそもいつも不機嫌そうに顰めている顔を、さらに顰めながらメアリの部屋へ向かっていた。シャーロットの部屋のある階から、一度ウェハースの階段を下って右に曲がり、少し行ったところに、メアリの部屋はある。

「あぁ……また、変わったのね」

――もとい、あった。このお菓子の城は、ここに住む少女の望みのままに形を変えるため、いつの間にか部屋が増えたり減ったりしていることがままある。シャーロットは不可思議な城の構造に、やれやれと首を振った。

「まぁ、メアリの部屋は本人と同じくらいわかりやすいから大丈夫だとは思うけど」

 下手をすればメアリの部屋の扉のデザインも変わっているかもしれないという事実から目を背けて、シャーロットは歩き出す。

「こんな面倒な事の、なにが面白いのかしら。私にはさっぱりよ……」

 シャーロットには幸いなことに、歩き出してすぐ見慣れた扉が目に飛び込んできた。大小色形様々なゼリービーンズが散りばめられた扉。シャーロットは扉を少し強めにノックをしたが、反応は無い。ドアを開けて中へ踏み込むと、シャーロットの目に極彩色の刺激が襲いかかる。

 少女達の部屋は、その部屋の持ち主の好みが反映される。シャーロットの部屋がモノクロであるなら、メアリの部屋はカラフル。しかも明色のみ。その部屋の中央、桃色の天蓋つきベッドへと、シャーロットは苛立たしげな足取りで歩み寄る。

「メアリ、起きてよ。『女王様』探しに行くんでしょ?」

天幕を開けると、メアリが体を丸めてすぅすぅと寝息を立てていた。

「まったくもう……」

 シャーロットが手を伸ばしてメアリの体をゆさゆさと揺すると、桃色の眠り姫はようやく目を覚ました。

「んぅ……おはよ、シャーロット」

 んーっと呑気に体を伸ばすメアリに、シャーロットは怒りを通り越して呆れを覚え、更にそれも通り越してしまったので、とりあえずは怒鳴ることにした。

「おはよ、じゃないわよ! 『女王様』を探しに行くって言ったのはメアリでしょ?」

「ごめんごめん、すぐ支度するから!」

 メアリがぴょいとベッドから飛び降りて、浴室へと消えた。かと思いきや、ものの数秒で浴室を飛び出し、レモン色のクローゼットから服を引っ張り出し始めた。その素早い動きを、ベッドに腰を下ろしたシャーロットは黙って眺める。

「んーこれは昨日と同じになるし、これとこれは合わないしなぁ……」

その目と鼻の先まで、放り投げられたメアリの服が飛び交う。悩んでいたものの数分で、橙色の上着と赤色の短いバルーンパンツを纏った姿に変身したメアリ。シャーロットにぎろりと睨まれたが照れ臭そうに笑うだけで、部屋を出ると、

「ねぇ、シャーロット! 早く行こうよ!」

「まったく、遅れたのは誰のせいよ……。ちょっとメアリ、片付けは良いの?」

「そんなのあとあと!」

――かくして、二人の冒険は始まった。

 

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