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おかしな城の少女たち  バックベアード



「『女王様』を探すのは良いけど、メアリ、なにかアテあるの?」

「無い!」

メアリの自信満々な即答に、シャーロットは早速頭を抱えた。

「大丈夫。どうにかなるよ、きっと。……あ!」

 メアリが突如として駆け出す。シャーロットが伏せていた顔を上げると、ドゴール帽に軍服を着た見覚えのある少女が、メアリに飛びつかれて慌てふためいていた。

「あら、グリフじゃない」

「シャーロット、眺めてないで助けてください!」

シャーロットがドゴール帽の少女の腰に抱き着いているメアリを掴んで、よいしょと引き剥がす。暴れたせいで傾いてしまったドゴール帽をキチンと直し、居住まいを正してから、グリフと呼ばれたドゴール帽の少女は二人に敬礼をした。

「お二人とも、お疲れ様です」

 浅葱色の髪は短く、顔立ちも酷く中性的。軍服の似合いようも相まって、軍服の胸部をわずかに押し上げる膨らみさえなければ十二分に美少年で通るだろう。

「なにもしてないけどね、私たち」

「いえ、お二人が元気であることが『女王様』の何よりの望みですから」

「それでお疲れ様と言われても……」

「ねーグリフー、『女王様』が何処にいるか知らない?」

二人の会話の流れを切って、メアリが質問を差し挟んだ。

「お二人は『女王様』をお探しなんですか?」

「この『世界』が面白いかどうか聞きに行くの!」

 メアリが満面の笑みを浮かべる隣で、シャーロットは少々バツが悪そうな顔を浮かべた。

「『女王様』のおられる場所ですか。先日までなら知っていたんですが、今日また変化したせいで私もわからなくなってしまいまして」

グリフが、面目ないとばかりに頭を掻く。

「ありがとう、どうせすぐ見つかるとは思ってなかったし」

礼を言って立ち去ろうとするシャーロットだったが、メアリが腕を組んでなにか悩んでいるのを見て、足を止めた。

「メアリ、どうかした?」

「グリフ。グリフは、この『世界』は面白いと思う?」

 不意に投げられた質問に、メアリ以外の二人が固まった。当のメアリはいたって真剣な眼差しをグリフに投げている。

「この『世界』が面白いかですか……」

 メアリの態度に応えるべく、グリフは顎に手をやって考える。その間も、メアリの眼差しに揺るぎは無い。

「私は面白いかどうかより、『ルール』を守ることの方が重要だと思います」

 数分してグリフが出した結論に、まずシャーロットが疑問符を浮かべる。

「質問の答えになってないんじゃない?」

「……確かにそうです。しかし、『ルール』を守らないのに、面白いもそうでないもないと思うのです」

「どーゆーこと?」

 メアリが首をかしげる。グリフは具体例を考えようと、頭を捻っていたが、

「お二人が遊ぶとき、『ルール』なくやっても、つまらないでしょう?トランプをやっていてジョーカーを勝手に増やしたり、隠れ鬼をしていて隠れる前に探し始めたり」

「メアリはたまにやるけどね……」

 シャーロットが諦観の念と共に呟く。だが今、真剣になっているメアリの耳には届かない。

「じゃあ、『世界』には色んなルールがあるから、面白いってことだよね?」

「メアリが『ルール』を破るのは、『ルール』があるとつまらないからでしょ? 『ルール』守ってばっかりじゃ、面白いわけないじゃない」

 白黒とカラフルがにらみ合う。そこに割り込む、軍服の少女。

「と、とにかく私が言いたいのは、『面白い』か『つまらない』かよりも、大事なことがあるということです」

 シャーロットとメアリ、そのどちらもその結論に納得はしなかった。ギラリと二人の視線がグリフに注ぐ。睨み合いに軍服も加わる羽目になったが、軍服に関しては睨み合いとは名ばかりで、あわあわと二人の間で慌てるだけ。

 疲れて肩を落とし、腕の時計に目を遣ったグリフ。途端に彼女の目が、大きく見開かれる。

「すいません、お二人とも! 私はそろそろ行かなければならないんですが!」

 グリフの言葉に、メアリが地団駄で答えた。

「えーっ! メアリまだ納得してないのに!」

「我が儘言わないの」

最後にもう一度二人に敬礼をして、グリフは城の長い廊下の向こうへと消えた。それを見送った二人もやがて、歩き出す。

「メアリ、私たちも行くわよ」

「今度は何処に行くの?」

 さぁ? とシャーロットは肩を竦めた。メアリは後につきながら、通りがかる廊下のドアを開けてはその中を覗いている。

 

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