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おかしな城の少女たち  バックベアード



「どこに行くのさ、二人揃って?」

 その時、二人の行く手の虚空から、からかうような声が響く。常人なら驚いて腰を抜かすところだが、声の主を知っている二人にとっては日常茶飯事でしかない。

「チシャ、隠れてないで出てきなさいよ!」

「ヤダね」

 持ち主無き哄笑と、シャーロットの歯軋りが廊下に木霊する。ひとしきりシャーロットが悔しがったが、チシャと呼ばれた少女は姿を現さない。

「付き合ってらんない。メアリ、行くよ」

 シャーロットはまだ何か言いたげだったが、廊下の先を目指して歩き出した。

「そんなこと言わないでよ、悲しいなぁ」

 シャーロットの目と鼻の先に、パッと少女の姿が現れた。灰色の髪に、緑と赤の縞模様のセーター、しかし下は青く丈の短いスカート。そんなちぐはぐな格好だが、それが気にならなくなるような特徴が一つ。顔に浮かんだニヤニヤとした笑みが、この少女に得体の知れない気配を漂わせる。

不意を突かれたシャーロットは尻餅をついてしまった。悪戯に成功したチシャは、再び大笑い。

「ちょっと、急に出てこないでよ!」

 恥ずかしいのと痛いのと腹が立つので、シャーロットが声を荒げたが、チシャの顔に浮かんだニヤニヤとした笑みに変化はない。

「出て来いって言ったのはシャーロットなのに?」

 シャーロットが返事に窮したのを、チシャはニヤニヤという笑みをさらに深めて眺めている。

「知らないわよ!」

立ち上がって服の埃を払ったシャーロットは、チシャの横を通り過ぎて行こうとする。メアリも慌ててその後ろをついて行こうとしたが、その肩をチシャの手が掴む。

「メアリに何か用?」

「ちょーっとだけ待ってね、メアリ」

 先を行くシャーロットが、足を止めて振り返った。

「何か用なの? 私たち行くところが――」

 シャーロットの姿が、メアリとチシャの目の前で消えた。我が目を疑ったメアリが駆けだすと、シャーロットが元いた場所に穴が開いている。メアリが耳を澄ますと、シャーロットの悲鳴が尾を引いている。

「チシャ、シャーロットどうなっちゃうの!?」

「死んだり、怪我したりはしないさ。ちょっとお出かけしてもらっただけ」

 穴は滑り台になっており、その先の場所にもよるが、余程の事が無い限り怪我などはしなさそうだ。

「……良かった」

一安心したメアリだったが、すぐ別な問題に気が付いた。

「女王様に会いに行くのに、どうしようかな。私だけ会っても、シャーロット信じてくれないだろうしなぁ……」

メアリが思い悩んでいると、チシャが人差し指を立てた。

「いい方法があるよ。メアリ、この向こうに扉があるんだけど」

チシャの人差し指が、今までメアリたちが進んできた方向と逆側を示した。

「あっち?」

「そう。行ってみてご覧」

 よっしと気合を入れたメアリがさっそく歩き出すと、足元の床がポッカリと口を開けた。

「いってらっしゃーい」

 メアリの姿も消え、廊下にはニヤニヤと笑いながら手を振る少女だけが立っていた。

 

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