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おかしな城の少女たち  バックベアード



 

「……私はどっちでもないと思う」

「あなたもそう言うのね」

廊下で会ったグリフの似たような発言と、その後の展開を思い返し、シャーロットは少し憂鬱な気分になった。「はい」か「いいえ」で答えられる質問に、どちらでもない返事をしてくるのは今までメアリだけであったので、やや辟易していることが窺われる。

「……私は色んなことを知りたいだけだから」

「知りたい事が無くなったらつまらないでしょ? そしてモックが頑張ればここの本は全部読める。ほら、つまらなくなるのは目に見えてるじゃない」

 シャーロットは憂いを帯びた瞳を、部屋の外へ向けた。からかうような印象を受けたモックがシャーロットの顔を見ると、至って真剣な顔で言っている。だからこそ、モックは対面の少女が少し、恐ろしく感じられた。

「……つまらないとか面白いで、読んでいるわけでは無いもの。あなたはつまらなくなりたいから、物事を否定しているの?」

 普段は言えない心中を吐露し始めたモックは、立て続けにまくし立てる。

「……そもそも、その物事を良く知らないのに面白いかどうかなんて判断できないと思うの。……シャーロットは、つまらないと面白いっていうのは、どういうことだと思うの?」

「私にとっては、何もかもがつまらないことよ。どんなものにも、いずれ終わりが来る。――だとすれば、一体何が楽しいの? どうせ、何にも無くなるのに。喜びも、悲しみも、世界も」

 シャーロットの瞳は、本気で世界に希望などあるのかと疑っている。

「どうやったって、乗り超えられない壁に登るのと同じよ。登ったら、いずれ落ちるのは目に見えてる。なら、登らないのが最善。そう思わない?」

 シャーロットは、絶望というものを知っている。その恐ろしさも十二分に。故に期待というものをせず、あらゆるものを「つまらない」と切って捨てる。

「……少なくとも私は、それでもいい」

「――どういうこと?」

 だからこそ、モックの返事はシャーロットを驚嘆させた。あやうくティーカップを落としそうになり、シャーロットが一人で慌てふためく。

「……最後に何もなくなったって、構わない。していたことが無駄になったって、それでいい。それでも、私はあらゆることを知りたい」

「多分、グリフも同じような事を言うんでしょうね……」

シャーロットの脳裏では、ルールを絶対遵守するグリフの姿があった。頭の中の彼女は、意固地になってしまった言い訳をしつつ、それでも言葉を決して翻そうとはしない。

丁度紅茶を飲み終えたシャーロットが、席を立った。

「紅茶ありがとう、そろそろ女王様探しに戻らなくちゃ」

 モックが、小さく手を振る。お見送りはナシなのね、不満げに呟きながら私室を出て行こうとする背中に、モックが言葉を投げた。

「……ここを出て左に進み、左手側二十一番目のドア。そこが女王様の今いらっしゃる部屋よ」

 シャーロットが驚いて振り向くと、すでに扉は閉まってしまった。もう一度、私室の扉を開ける事はシャーロットにはできない。この図書室みたいな子だと、シャーロットは思った。入ることは一応できても、その構造は、複雑怪奇にして把握困難。私室の扉も、なかなか開けてくれない。

「モックが図書室に似たのか、図書室がモックに似たのか。――図書室の鍵がお菓子で開くかどうか、今度試してみようかしら」

 

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