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「葉月さん、貴女この頃学校が終わるとすぐ帰るのね」
「ええ。それがどうかしまして?」
その日も学校が終わって書店へと出かけようとしていた葉月に級友が声をかけた。
「それに最近ため息ばかりついてらっしゃるわ」
別の級友も話に加わってきた。
「恋煩いでもなさっているのかしら」
周囲にいた級友達はそうやって葉月をからかうのだった。
「私は貴女達と違うのよ」
葉月は手短にそう答えるとついと教室を出て行った。
「違うって、何がかしら?」
教室に取り残された少女達は互いに首を傾げて囁きあうのだった。
(そうよ、私は自分のしたいことをするのよ)
自分をからかった級友達に腹を立て、肩を怒らせながら葉月はいつもの書店へ行く。狭く小さなその書店は古い建物だったが、それが落ち着いた雰囲気をかもし出て何とも居心地のいい空間が出来上がっている。
(今日もいらっしゃるわ!)
空間の落ち着きはどこへやら、葉月は隠れるようにして壁際の本棚に張り付き二つ先の棚の前で本を読み耽っている例の青年を見つめた。葉月はここのところ毎日のように書店へ来ていた。毎回やっているのはまさに今やっていること。
「……」
青年は相変わらず葉月に気づいていないのか、いつもの様に読んでいた本を閉じ棚に戻している。背筋がピンと伸びて姿勢が良い。葉月はその何気ない動作にしばし見とれる。
「あの」
突然くるりとこちらを向いた青年。不意討ちの様に真直ぐこちらを見てそう答えた。
「は……はい!」
あまりに驚いて裏返った声の葉月。本棚の影から顔だけ出ていたその表情は情けなくも呆然としている。
「貴女はいつもこの書店にいらっしゃるのですね」

青年はそんな葉月の表情を見て微笑んだ。

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