やはり届かず平均値
                                     不知火
1.運命の時
 ついに……ついにこの時がやってきた。
 四月に学年が上がってからおよそ半年。この半年間に渡って進めてきた計画[プロジェクト]が、いよいよ実現されるのだ。
 思えば、長い道のりだった……。山を越え、谷を越え、なんてベタな表現じゃ全然足りない。山ならエベレスト、谷ならペルー渓谷ぐらいは言ってもらわないと。それほどの苦難に、俺は実際に立ち向かってきたのだから。
 だが、それも今日で終わりだ。数々の試練を乗り越えてきた俺の前には、きっと、素晴らしい栄光が待っていることだろう。
 さあ、いくぞ! やるぞ! 俺は今日こそ、己の限界を超える!
 
「意気込んでいるところ悪いが、やるならさっさとしてくれないか? お前のような実験体[モルモット]のために、これ以上私の貴重な時間を割きたくはない。お前にとっては運命の時なのかもしれんが、所詮はたかが身長測定なんだからな。さっさと終えて、ここから出ていってくれ。邪魔だ」
「……この半年でさらに扱いが酷くなりましたよね、先生」

 続く→